仲真史、レコード屋の閉店に思う part.2
しかし、世間の商業歌謡曲ではなくこういう音楽を好きならば、リスナーの人もプライドを持って聞いてほしい、とも思う。渋谷の宇田川町の素晴らしいレコード屋がなくなるのは、そういうリスナーのプライドが欠落している部分にもあると思う。プライドがあれば、安いというだけで店を選ばないはず。例えば、最近の地方の店では商品をチェックして携帯で東京のレコード屋のサイトで安く買うらしい。これはもう完全プライドなしですよね。本来なら客からのリスペクトを購買という行為で表すべきその店があるからこそ、地域は活性化されるはずなのに。
ただ、リスナーをそのようにしたのは、僕たち店側に原因があることはもちろんです。僕がその原因のひとつだと思うのが
『試聴機』
昔は試聴なんて出来なかった。いや実際は出来る。しかしそれは店のスタッフに認められた者のみ。耳の肥えた、いやそれまで何百万円もそれに投資し黄金の耳を手に入れた者(そこに人格やたまに築き上げた地位も加わる)しか試聴など出来なかったのだ。プロもしくはセミプロですね。プロだから試聴もカッコイイ。1枚約10~18秒。溝にもバッチリ入れる。そして3枚か5枚聴いたら、そのほとんどをいただきあとは聴かない。なぜなら、前が良かったアーティストの新譜だったり、プロデューサーが好きな奴だったり、リミキサーが好きだったり、レーベルが好きだったり、ジャケが自分好みだったり、と聴かずともそれが良いものと判断できる盤なので試聴などする必要ないのです。なぜならプロだから。もちろん、家で帰って聴くとハズすかもしれない。だからといって「くそ~ハズしたーー!損した試聴しておけばよかった!!」なんて暴れない。プロだから。あくまで冷静にレコード棚の一角にそっとしまう。そして寝かす。寝かし寝かして時期を待つ。そいつがいつか輝く瞬間を。といってもまあ、10枚に1枚くらい。いやもっと確率は低いか。寝かし技。プロはそれを知っている。しかし、ハズしたというものではなく、その時の自分がわからなかっただけなのかもしれない。いやそうなのです実際。でも、ハズしたというか、バカ当たりじゃないものだからこそなんだか好きというのが重要だったりします。大トロばかり喰ってたら、あの新子の美味さなんてワカらないはず。新子がブームになっても大トロばかり喰っていた人には、板さんに注文する権利はないですよ。寿司が好きというのなら、わからなくても板さんが今美味いと言うんだから、頼んで喰っておけばいいのです。いずれわかるときがくるあの美味さ。その特別な寿司屋に入った時点で、自分が回転寿司で食べていた大トロもどきのアブラマグロのことは忘れて、言われるがまま身を委ねて欲しい...。まあとにかく、ハズす経験は重要なのではないでしょうか。金出して買ったら、良くないと思ったにしてもこの盤になんかいいとこあるんじゃないかと何回も聴いてみたりして、それで好きになったり、なにか分ったり、自分の新たな道が開けることもざらなはず。あと、知らずに買っておいたらDAFT PUNKとPHOENIXのメンバーが昔やっていたバンドが唯一出していた7インチだった、ていうご褒美もあったりするしね。僕はもちろん試聴なんてしないので、50枚に1枚しか当たらない、という時が3年くらいありました。しかし、テリー・ジョンソンさんが「50枚に1枚当たれば万歳」ということを言っていたとある日聞いて感動しました。最終的にはホワイト盤を当てる(もちろん試聴せず)という技を習得しようとしていました。あれは大変だった...。とにかく、試聴にしても実際は数分。だって店の人に迷惑かけちゃダメじゃん。忙しいんだし。プロは颯爽と去って行く。ううううカッコイイーーー。ペイペイの時は、そういう試聴するプロの方々の姿に憧れ、せっせとレコードを買い通い自分を磨いたのでありました。
それが今はどうか。いまは、店に入れば誰でも試聴ができる。プロでも一聴してワカらないのに普通の人がちゃっと試聴して、そんな次世代に繋がる新しいレコードの良さがわかるはずがありません。わかったら、僕のこの20年くらいはなんだったんだ、ってことにもなります。ワカったら、あんたもうジョン・ピール級だよ、マドンナのブレインになれるよ、カイリーも次回作は君のセレクトでお願いするはず、マジで。ですから思うのです。試聴を自由にお客様にさせてしまうということは、お客様の成長も妨げ、しかもこっちが新しいモノとして紹介するものに対しては理解されず、ワカり安いモノしか買われない。するとワカりにくい新しいモノは売れないので店は仕入れにくくなる、だからワカり安いものを多く仕入れて売る、するともっと一般の人が来てくれて売上は一時上がる、これはいいぞとさらにワカり安いモノをメインで売る、しかし元々普通の音楽では物足りなく通っていた輸入盤屋のメインの客層は、そこに価値を見出さなくなり行かなくなる、そしていつの間にか飽きやすい一般の人たちは去っていく、というかその一般の人も実は普通でないそのものに興味があったから店の扉を開いていた。ということになるのではないでしょうか。だから、ウチは試聴を止めました。もちろん、それでこなくなったお客様もいらっしゃいます。けど、何十枚も試聴して一枚だけ買ってもらえるお客様の相手をバイトにさせる時給に見合わないこともなくなったし、実際「試聴はできません」というとほとんどのお客様が「じゃあ、これで」とそのまま買われて行きました。結局それでダメと思ったらもう店には来られないので、それがそのお客様にとっての当店への評価なわけです。しかし多くのお客様が「この前買ったの良かったよ」と再度ご来店いただき、中には以前まではハウスだけを聴いて買っていたお客様がインディ系を買っていかれ「この前のロックみたいなのが良かったから、あーいうの教えて」と言ってこられたときもありました。実は正直みんながこのひとちょっとなーと思っていたので、その時は一同ビックリ。そのお客様が、いまではすごく良い常連さんだったりします。しかし思えば、これまでそのお客様が悪かったのではなく、僕らが勝手に試聴機という人が惑わされるも のを置いて、そのお客様の行為だけを見てダメだと判断していただけで、自分達が悪かったのです。最悪です。自分だって若い時からタダで試聴できるなら、絶対同じことしてた。なのになんて偉そうな判断をしていたのか。本当に反省しました。とにかく、そういうお客様が何人もいらっしゃいます。そして現実に売上は、試聴が出来た頃よりいまの方が全然いいのです。実際客数は少し減ったかもしれませんが、客単価がそれ以上にあがったのです。僕たちが責任もって仕入れた商品を試聴なしで提供することに対して、お客様が出した答え。それによって出来た信頼関係とともに、結果が出たのだと感謝しています。ウチは本当にお客様に恵まれています。本当に感謝です。
そうだ外人は試聴OKなのです。なぜならこーいう音楽がラジオなり、身近に溢れてるので耳がプロなのです。だから僕ら日本人は不幸と言えば不幸。その辺りも直して行かなければと真剣に考えてます。
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と言ったって、各々のお店さんが値段にしても試聴機にしても各々事情や考えがあるはず。もちろん僕はそれを尊重します。ウチだって、本当なら2,000円で売られなければいけないものである12インチを突然2,000円で売ることは実際できません。しかしお客様にそこの辺をわかってもらえるだけでも、随分と違った状況になるのではないか、と思います。東京のお店の値段に地方のお店さんが合わせるのではなく、その逆ではなければいけない。東京のお店はその分より良い品揃えをし東京だからこその店になる。地方のお店さんは東京と価格競争などせずに、お客様に商品を提供出来る。安く売るだけが企業努力ではありません。いやそれはもしかしたらいまの状況ではかえって悪なのではないか、とさえ思います。この点については以前に書きましたので省略。
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リスナーにとっても気軽に街でレコードを買えなくなる時代になってきました。しかしインターネットで買うだけじゃ絶対にダメなのはもうみんなわかっています。交流の場所がない限り文化は産まれないのです。
輸入盤店というのはコンビニみたいなものではなく、文化を産み出す場所だと思います
僕らもそれ念頭に働いたり営業したりしなければならない。という僕も、バイト時代はそんなことまったくワカっていませんでした。自分がそういう立場になるか、教えてもらうまでは、なんだか適当だったような気がします。ここまで偉そうに書いてきたのに、すみません。
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書いていて、正義ぶってるだけで果たして自分が正しいのか正しくないのか、結局結果が全てなわけで自分自身は一体どうなんだ、と自暴自棄になって鬱に突入しそうな気もし、なんだかよくわかりません。けどついでに最後に言わしてもらうと、「いまがチャンス」と思って東京に進出してきて、これまでと同じことを繰り返しシーンをめちゃくちゃにするだけして倒産してしまう店が現れたりすることだけは、もう勘弁して欲しい、なあー。
-ESCALATOR RECORDS-仲真史
2007 12 12 [日記・コラム・つぶやき, 音楽] | 固定リンク

